「appetite」 2006/11/04 (Sat)

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Nago Mitill

そこにあるものが　美味しいのであれば

あなたは今、　幸福なのです。

 

腹を満たすためだけでなく、

心を満たすために　人は食事をするのです。

 

懐かしい人たちと囲んだ　美味しい記憶のにおいが、

温かくやわらかいスープへと　私をいざないます。

顔がある人間が作った料理を、　だから私は食べたいのです。

時に他者を傷つけ、あるいは殺すことさえもする人間の手が、

人間のために作る料理を　味わいたいのです。

そして、　この胸にある記憶を　あなたと分かち合うために

私は料理を作り、　満腹するのです。

 

そこにあるものが　美味しいのであれば

あなたは今、　幸福なのです。

 

腹を満たすためだけでなく、

心を満たすために　人は食事をするのです。

 

生きるために　あなたは今、　ものを食べるのです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2006年・筆）

［備忘録］

料理というものは、面倒でも一手間かけるだけで、ぐっと美味しくなることが多いです。美味しい料理には、人間のヤル気という名の愛が必要なのです。動物が食べるものと、人間が食すものとでは、手間のかけかたが違います。

人間の食事は、単に栄養素を摂取するだけでは、きっと足りないのだと、私が信じたいだけです。